子の連れ去りについての対応
妻からの相談例
私と夫との間には3歳になる息子がおりますが、夫とは日々喧嘩が増えて夫婦仲は悪くなっていました。そうしたところ、夫が突然息子を無断で連れて出て行ってしまいました。これまで私がずっと息子の面倒をみてきたにもかかわらず、突然に息子と引き離されてしまったため、私は夫に連絡を入れて、息子をすぐに返して欲しいと伝えましたが、夫からは、「俺が育てていくから返さない」と言われてしまいました。息子が通園している保育園に迎えに行き、連れ帰ってきてもよいでしょうか。
弁護士による解説
1 速やかに子の監護者指定、子の引渡しの申立てを行う
別居に際して、父母のいずれが未成年者の監護を行うかについては、まずは父母(夫婦)で協議して定めることが好ましいと言えますが、別居に至る状況では夫婦関係は既に不和に陥っており、話合いが難しいことも多いです。そうした際に、父母のいずれかが、他方の了解を得ることなく、未成年者を連れて別居をしてしまうケースもあります。
こうしたケースでは、未成年者を連れて行かれてしまった親としては、家庭裁判所に、速やかに子の監護者指定及び子の引渡しを求めて調停・審判申立てを行うことが考えられます。なお、この際、未成年者の置かれた状況により速やかに未成年者を取り戻す必要性があるようなケースでは、保全処分についても併せて申し立てることにより、最終的な結論が出るまでに時間を要する場合においても、とりあえず仮に未成年者の引渡しを求めていくことも考えられます。
2 本件ケースの場合
本件においても、夫(父親)が妻(母親)の了解を得ることなく息子さんを連れて行ってしまったということですので、家庭裁判所に、速やかに息子さんの監護者を自分に指定し、引渡しを求める申立てを行うべきといえます。
なお、突然子どもを連れて行かれてしまったことから、子どもが通園している保育園や幼稚園に迎えに行って連れ帰ってきてしまいたいという思いが生じるかもしれませんが、こうした実力行使については絶対に控えるようにして下さい。裁判所においては、様々な事情を総合的に考慮していずれの親が監護者として適切かという判断をしていくことになりますが、こうした実力行使により子どもの監護を奪取する行為は、子どもに大きな心理的負担を与えるものであり、監護者としての適格性に疑問があるとして不利な事情となってしまうおそれがあります。
本件ケースの場合、妻(母親)としては、今すぐにでも息子さんに会いたい気持ちであると思いますが、息子さんを奪い返しに行くなどの実力行使については堪えていただき、家庭裁判所に、速やかに監護者の指定及び引渡しの申立てを行うべきです。また、監護者をいずれと定めるかの結論が出るまでの間であっても、息子さんとは、面会交流を行うなどして交流機会を実現することも考えられますので、そうした申入れを行うことも並行して検討するとよいでしょう。
子の連れ去り別居の事案では、初動が非常に重要となってきますので、お早めに弁護士への相談をご検討いただくとよいかと思います。