婚姻費用算定と公共料金等の負担

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別居中の夫からの相談例

 

 現在、私と妻は別居しており、妻から、生活費(婚姻費用)を支払うように請求されています。婚姻費用については、いわゆる算定表と呼ばれるものを参考に金額が決まることが多いと聞きましたが、私は、現在妻が住んでいる私名義の自宅の公共料金(電気、ガス、水道料金など)を負担していますし、また、妻が使用している自動車のローンも返済しています。こういった費用については、算定表による婚姻費用の金額算定に当たって考慮はされないのでしょうか。

弁護士による解説

1 算定表による婚姻費用金額について

 

 現在の実務においては、婚姻費用金額の算定について、いわゆる算定表を用いて目安となる金額を算出することが一般的です。この算定表による金額については、基本的に、権利者(婚姻費用を受領する側)の生活費全般の費用を含むものといえます。つまり、権利者は、自身の生活費全般について、義務者から受領する婚姻費用及び自身の収入によって支払うことが前提となっています。

 そのため、義務者において、別途権利者の生活にかかる費用を負担しているような場合には、当該費用の負担は正に婚姻費用の支払の一部といえますので、当該費用については本来支払うべき婚姻費用金額から控除するなどの考慮がなされることになります。

2 本件のケースの場合(婚姻費用算定において控除(考慮)される費用)

 

 具体的にどのような費用が婚姻費用から控除(考慮)されるかについてですが、例えば、各種公共料金(電気料金、ガス料金、水道料金、電話料金など)については、まさに妻(権利者)の生活にかかる費用であり、婚姻費用金額の算定においては控除されるものといえます。

 また、夫婦の共有財産である自動車を妻(権利者)が使用している場合の自動車ローンの負担については、当該ローンは本来夫婦において負担すべきものであるとして、ローン月額の約2分の1を権利者が負担すべきとした裁判例もあり、そのような考えによれば、夫(義務者)が負担している自動車ローンの半額を婚姻費用から控除するということもあり得るでしょう。なお、自動車の保険料については、「現に自動車を使用する者が負担すべき」とした裁判例があり、義務者である夫が負担しているような場合には、保険料についても婚姻費用から控除できる余地があるといえます。
 他方、自宅にかかる固定資産税や火災保険料などについては、その性質上、権利者の生活にかかる費用、つまり婚姻費用の支払とは言い難く、これらの費用については婚姻費用から控除することは認められません(なお、夫(義務者)が、妻(権利者)の居住している自宅の住宅ローンを負担している場合、住宅ローンの負担については、一定の考慮がなされることになります。)。
 本件においては、いわゆる算定表により算出される婚姻費用金額を目安として、上記各費用の負担金額について控除(考慮)して、具体的な婚姻費用金額を決定していくことになります。

私たちが丁寧にわかりやすくお話します。

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