扶養家族の増加と養育費の変更
離婚した妻からの相談例
私には、元夫との間に生まれた5歳の子どもがいます。
元夫から月額8万円の養育費を受け取る条件で、1か月前、元夫と離婚しました。
しかし、先日、元夫から、「再婚した。収入のない妻を養う必要があるので、養育費を減額したい。」との申し入れがありました。元夫は、離婚当時、既にその女性と交際を始めており、再婚を予定していたとのことでした。
このような養育費減額の申入れは認められるのでしょうか。
弁護士による解説
1 「事情の変更」が認められる場合には養育費の額の増減が認められる
父母の間で、養育費の額について合意したとしても、その後、「事情の変更」があった場合には、養育費の額の増減が認められます。
では、養育費の額の増減が認められる「事情の変更」とは何でしょうか。
一般論としては、合意の当時、当事者に予測不能な事情が生じた場合などが、これに該当するといえます。
2 本ケースの場合
本ケースの「元夫が再婚した」という事情は、養育費の減額が認められる「事情の変更」にあたるでしょうか。
この点、元夫は、離婚当時、既に女性との再婚を予定して交際していたようですから、元夫にとって、再婚は予測不能な事情とはいえないでしょう。そのため、本ケースでは、元夫からの養育費の減額の申入れは認められないと思われます。
加えていえば、相談者についても、離婚当時、元夫から再婚予定を既に聞かされていた場合は、再婚の可能性を認識して養育費の額について合意しておりますので、再婚が予測不能な事情とはいえず、養育費の減額は認められないでしょう。
では、元夫が、自身の再婚の予定を相談者に隠して、養育費の額について合意した場合はどうなるのでしょうか。
この場合には、相談者にとっては、再婚が予測不能な事情といえそうですが、他方で、夫は、自身の再婚予定を当然認識した上で、養育費の額について合意しております。ですから、合意された養育費の額は、再婚予定を前提としていたといえるのではないでしょうか。
そうしますと、再婚は夫にとって予測不能な事情ではないため、養育費の減額が認められる事情の変更にはあたらず、養育費の減額は認められない可能性が高いといえます。
3 養育費の減額が認められ得る場合
本ケースとは異なり、養育費の額について合意をした当時、元夫に再婚の予定がなかった場合(再婚が予測不能な場合)はどうでしょうか。また、元夫が再婚した家族のところに実子が出生した場合(子供の出生が予測不能な場合)はどうでしょうか。
これらの場合には、再婚相手の収入や離婚後から養育費の減額を申し入れるまでの期間等の事情も考慮した上で、養育費の額の減額が認められる可能性があるでしょう。