退職金の財産分与

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夫からの相談例

 私は、あと5年で定年退職になるのですが、先日いきなり妻から離婚を切り出されました。離婚をすること自体は納得しているのですが、妻が現在保有している財産だけでなく、退職金についても財産分与の対象財産に含めるべきだと言ってきました。私が汗水垂らして長年勤め先に貢献してきた証である退職金についても分けなければいけないということには納得できません。退職金についても妻との間で分けなければいけないのでしょうか。

弁護士による解説

1 退職金に関する基本的な考え方

 婚姻期間中に退職金が支払われた場合には、退職金も財産分与の対象財産に含まれることについては、実務上大きな争いはありません。

 そこで、既に支払われた退職金のうち、どの程度の額が財産分与の対象に含まれるのかが問題となります。財産分与の対象財産とは、婚姻期間中において形成された財産をいうことから、財産分与対象財産に含める退職金額は、勤務していた期間中にどれだけ婚姻関係を継続していたか、すなわち、

 支給退職金額×同居期間÷勤務期間

により算出することが一般的となっています(他の方法によって算出した裁判例も存在します)。

2 将来支払われる退職金

 離婚時に未だ支払われていない退職金については、実務上、その支給を受ける蓋然性が高い場合には、財産分与の対象財産に含めるべきと考えられています。その蓋然性については、勤務会社の規模、退職金規程の有無及び内容、勤務年数、定年退職までの期間等により、判断されます。

 そして、将来支払われる退職金については、いつ分与するかという分与時期の問題と、退職時期をいつと仮定して退職金を算定するかという算定時期の問題があります。

 具体的には、分与時期について、①離婚時に支払う場合と、②退職金が支給される時に支払う場合とが考えられます。

 また、算定時期については、①将来の退職金見込額を基準とする考え方と、②離婚時に退職したと仮定して退職金の見込額を算定する考え方があります。

3 本件のケース

 本件では、未だ退職金が支払われておりませんので、退職金が支払われる蓋然性があるのか、そして、蓋然性があるとしても、いつ退職することを想定して退職金を算定するか、退職金のうちいくらを財産分与対象財産に含めるのか、いつ支払うのかなどについて相手方(妻)と協議する必要があります。

 退職金とは、生涯で受け取る最も高額な収入であることが一般的であり、退職後の生活にも大きく関わってくる財産です。夫婦両者の今後の生活に大きな影響を与える財産ですので、当事者のみで結論を出すのではなく、一度弁護士にご相談されることをお薦めします。

私たちが丁寧にわかりやすくお話します。

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