元交際相手の配偶者から慰謝料を請求された場合

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慰謝料を請求された女性からの相談例

 

 私は、約4年前に、既婚者の男性と交際したことがありました。数か月間の付き合いでしたが、何度か肉体関係もありました。

 その男性とは、別れた後は一切連絡をとっていませんでしたが、最近、その男性の妻から書面が届き、そこには「あなたのせいで離婚することになった。慰謝料を支払ってください。」という内容が記載されていました。

 私は、慰謝料を支払わなくてはいけないのでしょうか。

弁護士による解説

1 不貞行為に対する慰謝料の種類

 

 不貞行為に対する慰謝料には、一般的には2種類あるといわれています。

 一つ目は、「不貞慰謝料」といわれるもので、これは不貞行為をしたこと自体に関する慰謝料です。不貞行為の事実により、円満な婚姻関係を維持していた他方配偶者の権利は侵害され、その配偶者は精神的損害(精神的苦痛)を被ることになるため、慰謝料が認められます。

 二つ目は、「離婚慰謝料」といわれるもので、これは不貞行為の結果、離婚せざるを得なくなったことに関する慰謝料です。不貞行為は離婚の原因となる行為ですが、不貞行為が直接の原因となり夫婦が離婚(婚姻関係の破綻)に至ってしまった場合、これにより他方配偶者は精神的損害(精神的苦痛)を被るため、慰謝料が認められます。

2 慰謝料請求の時効

 

 慰謝料請求は、不法行為に基づく損害賠償請求であり、法律上、被害者(不貞行為をされた配偶者)が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときに時効によって消滅するとされています。

 そのため、「不貞慰謝料」の請求権は、不貞行為をされた配偶者が不貞行為の事実を認識したときから(不貞行為が発覚してから)3年間の間に権利行使をしなければ、時効によって消滅することになります。

 これに対し、「離婚慰謝料」の請求権は、不貞行為をされた配偶者と不貞行為をした配偶者が実際に離婚したときから3年間の間に権利行使をしなければ、時効によって消滅するとされています。

3 不貞相手に対し「離婚慰謝料」が認められる場合

 

 この点、判例では、「離婚慰謝料」に関して、離婚は本来夫婦間で決められるべき事柄であるため、離婚させたことの責任を夫婦の一方と不貞行為をした相手方(夫婦ではない第三者)が負うことはない、そして、離婚させることを意図し、その婚姻関係に不当な干渉をするなどして離婚せざるを得ない状況に至らせたと評価すべき特段の事情があるときに限り、夫婦の一方と不貞行為をした相手方(夫婦ではない第三者)に対し、「離婚慰謝料」を請求できると判断しています。

 このことから、判例に従えば、「離婚慰謝料」に関しては、夫婦ではない不貞行為の相手方に対し、特段の事情がない限り、請求することはできないということになります。

4 本件ケースの場合

 

 以上を前提に本ケースを検討します。

 まず、相談者の方に対する「不貞慰謝料」の請求については、不貞行為があったのが約4年前ということでしたら、時効により消滅する可能性が高いということになります。

 次に、相談者の方に対する「離婚慰謝料」の請求についても、相談者の方が男性を離婚させるために、婚姻関係に不当な干渉をしたような事情がない限り、認められない可能性が高いということになります。

 慰謝料の請求を受けた場合、理論的な検討が必要になることも多いです。慰謝料を請求されたとしても、焦って当事者のみで解決を図ることはせず、まずは一度弁護士にご相談されることをおすすめします。

私たちが丁寧にわかりやすくお話します。

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