転職に伴う収入の減少と婚姻費用の関係

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別居中の妻からの相談例

 私には5歳の子どもがいますが、別居中の夫に対して、婚姻費用分担請求調停を申立て、1年前に月額10万円の婚姻費用の支払を受けることで調停が成立しました。
 しかし、先日、夫から、「前の調停のときには年収600万円だったけど、最近転職して、年収400万円に減ったから、婚姻費用を7万円に減額してほしい」などと、婚姻費用減額の調停を申し立てられてしまいました。
 私が受け取ることのできる婚姻費用は、減額されてしまうのでしょうか。

弁護士による解説

1 婚姻費用分担義務について

 民法では、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」と定められているため(民法760条)、原則として、夫婦は、別居していたとしても婚姻関係が継続している以上は、婚姻費用を支払う(分担する)義務があります。

2 婚姻費用の分担額の変更について

 しかし、夫婦間で婚姻費用に関する合意が成立した後、事情に変更が生じたときは、家庭裁判所は、各自の資力その他一切の事情を考慮し、従前の協議を変更して新たな婚姻費用の分担額を審判により決定することができるものとされています。

3 収入が減少した場合

 一般に、婚姻費用に関する従前の合意当時に想定されていなかった収入の減少は、婚姻費用を減額すべき事情変更ということができるでしょう。

 本ケースの場合にも、例えば、営業職の夫がリストラに遭い、やむを得ず年収400万円の職場に転職することとなった場合などには、婚姻費用が減額される可能性があります。 

 他方で、歯科医の夫が非常勤専務医として年収約550万円を得ていたが、退職して大学の研究生となり、アルバイト収入を加えて年収約399万円となったケースで、「退職がやむを得なかったとしても、その年齢、資格、経験等からみて、(従前の収入と)同程度の収入を得る稼働能力はあるものと認めることができる」「自らの意思で低い収入に甘んじている」などと判示して、婚姻費用の減額を認めなかった裁判例が存在します。

私たちが丁寧にわかりやすくお話します。

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