有責配偶者からの財産分与の請求

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離婚協議中の夫からの相談事例

 この度、妻の不倫が原因で、離婚することとなりました。妻も自分が不倫していたことについては認めています。

 妻と離婚について協議をしていたところ、妻から、財産分与として、財産の2分の1を渡せという請求を受けました。私としては、妻の不倫が原因で離婚することになったのに、妻から財産分与を求められることについて納得できません。このような場合にも、妻に財産を渡す必要があるのでしょうか。

弁護士による解説

1 財産分与の考え方について

 今回のケースでは、有責配偶者(婚姻関係を破綻させた原因をつくった者)からの財産分与の請求は認められるのか、ということが問題になります。 財産分与には、一般的に、①婚姻中の夫婦の財産の清算(清算的財産分与)、②離婚後の扶養(扶養的財産分与)、③離婚による精神的苦痛に対する慰謝料(慰謝料的財産分与)という3つの要素があると言われています。そして、有責配偶者からの財産分与の請求が認められるかについては、それぞれの観点から考えてみる必要があります。

(1) 清算的財産分与

 清算的財産分与は、婚姻期間中に形成した財産(共有財産)を、夫婦双方の財産形成についての貢献度、寄与度等を考慮し、公平に分配するという考えに基づいています。この観点からすると、主として、夫婦それぞれの財産形成への貢献度等が問題となるため、有責配偶者からの請求であっても、財産分与が認められるということになります。

(2) 扶養的財産分与

 扶養的財産分与は、清算的財産分与や慰謝料を受領したとしても離婚後の生活に困窮してしまうという場合に、補充的に認められるものです。そして、裁判例では、有責配偶者に対しては、扶養的財産分与については認めないか、認めるにしても分与額を大幅に減額するもの等が多く存在します。

(3) 慰謝料的財産分与

 慰謝料については、財産分与の中で請求するのか、個別に請求するのかという点で議論があるところですが、有責配偶者からの慰謝料請求が認められないことと同様に、慰謝料的財産分与も認められません。

2 今回のケース

 以上の財産分与の考え方からすると、今回のケースのように妻が有責配偶者であったとしても、清算的財産分与の請求については認められる可能性が高いです。

 もっとも、この場合、財産形成への貢献度については、諸般の事情を総合考慮して決定するとされているため、離婚に対する有責性が貢献度を減少させる要素となる可能性はあります。現に、上記貢献度を決定するにあたり、離婚に至った有責性の程度を考慮要素とした裁判例も存在します。

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