婚姻破綻の責任がある者からの離婚請求

夫が不倫をした結果、夫婦が破綻状態となり別居していたところ、夫から妻に対して離婚の申し入れがなされたような場合、こうした夫の離婚請求は法的に認められるのでしょうか。

このケースの夫のように、婚姻関係を継続することができない状況をつくった者、すなわち婚姻を破綻させた原因をつくった者を、一般的には、「有責配偶者」と言います。以下では、このような自ら婚姻破綻の原因をつくった「有責配偶者」からの離婚請求について弁護士が解説します。

1 裁判所の立場(原則と例外)

裁判所としては、「有責配偶者」からの離婚請求は、原則、認めないという立場をとっています。しかし、一定の条件のもとで、例外的に認める場合もあります。

具体的には、以下の3つの条件を基礎として総合的に考慮し、「有責配偶者」からの離婚請求でも認められる場合があると判断しています。 

  • ①夫婦の別居が両者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいること
  •  
  • ②夫婦の間に未成熟の子供がいないこと
  •  
  • ③相手方配偶者が離婚により精神的、社会的、経済的に極めて過酷な状況に置かれるなど、離婚請求を認めることが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められないこと

2 別居期間の条件について

上記の3つの条件のうち、①の別居期間の長さについては、具体的に何年間であれば条件を満たすとは明確にいえない状況にあり、裁判所の判断も分かれています。8年間の別居期間で離婚請求を認めたものもあれば、10年間の別居期間で離婚請求を認めなかったものもあります。

この点、裁判所の判断をみてみると、①の別居期間が長期にわたっているといえるかどうかについては、「有責配偶者」からの相手方配偶者に対する財産の給付(婚姻費用の支払等)や、「有責配偶者」の別居後の生活態度、「有責配偶者」からの財産分与に関する提案の有無(これは上記③の条件に関わる部分でもあります。)等も判断の要素としているように見受けられます。そのため、実務上は、このような他の関連事情も考慮して、必要とされる別居期間が検討されることになります。

3 まとめ

上記のとおり、「有責配偶者」からの離婚請求は一定の条件を満たす場合のみ認められるものとされています。そして、この条件の存在は、「有責配偶者」の側で主張、立証しなければならず、これには専門的な知識や技術を要する場合があります。

そのため、婚姻破綻について自身に責任があるが離婚をお考えの方や、有責配偶者から離婚を求められている方は、お早めに弁護士にご相談されることで、ご自身のおかれている状況を正確に把握して事前に準備を進めることが可能な場合もありますので、一度お気軽にご相談ください。

私たちが丁寧にわかりやすくお話します。

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